父の車に乗って
私は、小さい頃「後ろに乗りなさい」と言う母の声を後ろに「お父さん、お父さんの運転を見たいから助手席に乗っけて」と父に言っては、父の助手席をいつもゲットしていた。
父の安心できる車の運転に乗りながら、街の看板や、標識の文字を読むのが好きだった。そして、父に最近覚えたてのローマ字の看板の文字を読み、確認してもらうのが、その当時のお気に入りだった。
父の言う通り、アリババの本の話をローマ字で書き移す作業を毎日していたことで、私はローマ字を読めるようになっていたのだ。
私の父は、昔はトラックの運転手をしていたらしい。なので、車の運転はお手の物である。どんな乗り物より快適で、ブレーキを踏んで停まるまでに、いつ停まったか分からないくらいだったのを覚えている。
私のアコード史(その2)●2代目(昭和56年発売)~私の父がこの車に乗っていたが、オートレベリングサスペンションという自動車高調整装置やらクルーズコントロールやら、無駄にハイテクな車だったがこれも音が静かで乗り心地が良かった。オートレベリングサスペンションは故障しまくりだった。 pic.twitter.com/AIik5qwlhN
— motoichi (@million7000) 2016年10月11日
それから、時は経ち、父の車に乗ることも少なくなってきた。大人になり一緒に外に出ることもなくなったからである。
親は、前まではファミリーカーに乗っていたが、そのファミリーカーを父があまり運転したのを見た記憶がない。主に母が、ジイちゃんやバアちゃんを乗せてどこかに行ったり、私をたまに乗せたりした。
父は、その頃、スポーツカーを一台所有していて、退職後の娯楽だと言っては乗り回していた。そして、まだ母も乗ったことのないスポーツカーに父は私を乗せるから、ドライブに行こうと誘った。
乗ると、普通の車と違って見る世界が違う、車高がまず低いのだ。そして、キーを回すとドルルルルルンと低い音が、キュキュキュキュッとチョロキュウのような動きで車が動きだす。物凄い、回転と音と圧力である。
【Aventador (Lamborghini)】魂を揺さぶる6.5L V12エンジンはひと吹かしすると100km/hを軽々と越え、そのまま踏み続けると350km/hを超える世界最高峰のスポーツカー。《価格》4660万円 pic.twitter.com/v9HFRGFCTp
— 車大好き!世界の車! (@gakigyqilomu) 2016年10月11日
父はというと、黒のドライビンググローブをはめ、サングラスをかけ、もうその気だ。
キュキュキュキュぎゃぎゃぎゃブオーーーンもの凄い爆音とともに、車は走り続ける。
大人になって乗ってるので、手加減はない。降りた後にはクタクタに疲れるくらいの運転だ。怖いくらいの速度ではあったが、幼い頃からの安心感で父の運転だしというのはどこかにあった。
大人になっても、父の車に乗り、父と共に水平線を走る。あのスポーツカーでの運転が父との最後のドライブであった。今は、私がチビたちを安全運転の中、色々な街へと連れて運転をする。チビたちは、パパの安全な心地よいブレーキの車に乗って。