向こう水博士

向こう水博士は、世の中のあらゆるテーマに対し率直に素直で真摯な意見を考える、いわば人生を好転させる福の神のような存在です。宜しくお願いします。

父の車に乗って

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私は、小さい頃「後ろに乗りなさい」と言う母の声を後ろに「お父さん、お父さんの運転を見たいから助手席に乗っけて」と父に言っては、父の助手席をいつもゲットしていた。

 

父の安心できる車の運転に乗りながら、街の看板や、標識の文字を読むのが好きだった。そして、父に最近覚えたてのローマ字の看板の文字を読み、確認してもらうのが、その当時のお気に入りだった。

 

 

 

父の言う通り、アリババの本の話をローマ字で書き移す作業を毎日していたことで、私はローマ字を読めるようになっていたのだ。

 

私の父は、昔はトラックの運転手をしていたらしい。なので、車の運転はお手の物である。どんな乗り物より快適で、ブレーキを踏んで停まるまでに、いつ停まったか分からないくらいだったのを覚えている。

 

 

 

それから、時は経ち、父の車に乗ることも少なくなってきた。大人になり一緒に外に出ることもなくなったからである。

 

親は、前まではファミリーカーに乗っていたが、そのファミリーカーを父があまり運転したのを見た記憶がない。主に母が、ジイちゃんやバアちゃんを乗せてどこかに行ったり、私をたまに乗せたりした。

 

 

父は、その頃、スポーツカーを一台所有していて、退職後の娯楽だと言っては乗り回していた。そして、まだ母も乗ったことのないスポーツカーに父は私を乗せるから、ドライブに行こうと誘った。

 

乗ると、普通の車と違って見る世界が違う、車高がまず低いのだ。そして、キーを回すとドルルルルルンと低い音が、キュキュキュキュッとチョロキュウのような動きで車が動きだす。物凄い、回転と音と圧力である。

 

 

父はというと、黒のドライビンググローブをはめ、サングラスをかけ、もうその気だ。

キュキュキュキュぎゃぎゃぎゃブオーーーンもの凄い爆音とともに、車は走り続ける。

大人になって乗ってるので、手加減はない。降りた後にはクタクタに疲れるくらいの運転だ。怖いくらいの速度ではあったが、幼い頃からの安心感で父の運転だしというのはどこかにあった。

 

 

 

大人になっても、父の車に乗り、父と共に水平線を走る。あのスポーツカーでの運転が父との最後のドライブであった。今は、私がチビたちを安全運転の中、色々な街へと連れて運転をする。チビたちは、パパの安全な心地よいブレーキの車に乗って。